デザインスプリントを短縮してやってみた

MF KESSAI(以下MFK)の佐藤です。デザイナーやってます。今年1月にJoinしてから、毎日窓からTHEビジネス街な大手町の風景を見て「大手町OL」感に浸っています。そのおかげか、あっと言う間に半年が経ちました。

今回は先日社内で行われたデザインスプリントのお話をしようと思います。
デザインスプリントを実施するにあたって、下記の書籍を参考にしました。

デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド」(オライリー・ジャパン、2016年)
Richard Banfield、C. Todd Lombardo、Trace Wax 著
安藤 幸央、佐藤 伸哉 監訳、牧野 聡 訳

「デザインスプリントとはなんぞや?」という方は下記のスライドをご覧ください。
Design Sprint Process / デザインスプリントの実際のプロセスについて

きっかけ

MFKではプロダクト開発のフローに以下の悩みがありました。

  • エンジニア、デザイナー以外がヒアリングやテスト以外でプロダクト開発に関わる手段がない
  • 解決したい課題に対するアプローチ方法が最適なのか検証したい

そこで、既に開発が決定しているプロジェクトでデザインスプリントを試してみることにしました。開発着手前ではありますが、デザイン、プロトタイプの作成も済んでいる状態です。
デザインスプリントを経て作成済デザインと同じ案になるのか、全く違う案となるのか検証してみることにしました。

結果

結果から先に話しますと、今回のスプリントを経て決定された案は、既に作成されたデザインとは全然違う案となりました。
開発コストの観点などで、過去に今一番必要なものではないと判断された案でした。

どうやった?

本来デザインスプリントは5日かけて複数のフレームワークを1回または数回繰り返して行うものですが、最初ということもあり1日で行う短縮版として実施してみました。
以下が実際に行った1日のスケジュールです。

全体スケジュール

  • 全体の流れ、ルール説明(10:30 - 10:50)
  • フェーズ1:理解(10:50 - 12:40)
    • 10:50 - 11:00:フェーズ1でやることの説明(10m)
    • 11:00 - 11:20:目標と目標では無いこと(20m)
    • 11:20 - 11:40:課題の定義(20m)
    • 11:40 - 12:00:チャレンジマップ(20m)
    • 12:00 - 13:00:ユーザージャーニーマップ(60m)
  • ランチタイム(12:40 - 14:00)
  • フェーズ2:発散(14:00 - 16:30)
    • 14:00 - 14:10:フェーズ2でやることの説明(10m)
    • 14:10 - 14:40:タスクストーリー(30m)
    • 14:40 - 14:50:マインドマップ(10m)
    • 14:50 - 15:10:8アップ(20m / 5分で考え1分発表×5、計10分×2回)
    • 15:10 - 15:30:ストーリーボード(20m)
    • 15:30 - 15:40:休憩(10m)
    • 15:40 - 15:45:サイレント評価(5m)
    • 15:45 - 16:00:グループでの投票(1人につき3m×5、計15分)
    • 16:00 - 16:05:スーパー投票(5m)
    • 16:05 - 16:30:個人でのワイヤーフレーム作成(25m)
  • 休憩(16:30 - 16:45)
  • フェーズ3:決定(16:45 - 18:00)
    • 16:45 - 16:50:フェーズ3でやることの説明(5m)
    • 16:50 - 17:20:チームでのスケッチ作成(30m)
    • 17:20 - 17:40:異論の儀式(20m / 説明5m, 批評5m×2チーム)
    • 17:40 - 18:00:最終スケッチの作成(20m)
  • 1日目振り返り(18:00〜)

参加メンバーは以下の通り。

  • プロダクトオーナー
  • Yさん(オペレーター)
  • Aさん(オペレーター)
  • Mさん(エンジニア)
  • Iさん(デザイナー)※タイムキーパー
  • 私(デザイナー)※参加メンバー兼ファシリテーター

参加ルールとして以下を設定しました。

  • 全員が議論に参加する
  • 誰かが発言している時は発言しない
  • 他人のアイデアへの批判を控える(特にアイデアを生み出す「発散」フェーズ)
  • 居心地よく過ごす
  • 人に優しく、アイデアに厳しく
  • 時間を守る
  • 必要のない限りスマートフォン、PCを使わない
  • 否定的な発言は禁止(「はい、でも…」は禁止)
  • 今回の問題とはマッチしないアイデアも書き留め保存しよう(アイデアのパーキングロット)
  • ふせんは横から剥がそう(反り返らないため)

デザインスプリントを実施する場所として会議室を借りることも考えたのですが、第1回目であること、最初はスモールスタートということでMFK社内にある卓球台で行うことにしました。

フェーズ1:理解

午前中のフェーズ1では「現状の理解」として、課題を定義し、メンバーの認識を合わせることをゴールとしました。

あらかじめ今回のデザインスプリントで検証する範囲と対象ユーザー(ペルソナではなく簡単な定義のみ)はデザインスプリント実施前に定義していました。
様々なフレームワークを用いて多方向から問題の本質を見ることで漠然としていた課題が徐々にはっきりとしていき、「本当に解決しなくてはいけない課題はこれだったんだ…」と全員で認識出来た瞬間は感動ものでした。

ただ、実際に行ってみて「ここは課題だな…」と思ったところもありました。
このフェーズでは本来行うべきペルソナの作成など、ユーザー自身の理解を行う作業を「身近にペルソナになりうる人がいるから」「時間が限られているから」という理由で省いたのですが、それによって基準とすべき「ユーザー」とは誰なのかが定義しきれていませんでした。
結果、「ユーザージャーニーマップ(※ユーザーの行動を時系列にまとめた表)」を作成する際、ユーザーの理解に時間がかかりすぎてしまいました。

フェーズ2:発散

フェーズ2では、フェーズ1で定義し認識した課題に対して解決方法を発散しまくるフェーズです。このフェーズではとにかくアイデアを出しまくり、出たアイデアを具体的な形にしていくための土台作りをゴールとしました。

このフェーズでは「8ups」というフレームワークが本当に面白かったです。
「8ups」は30秒で考えをアウトプットして10秒休憩という、40秒周期で8つのアイデアを出すというアイデア出しのフレームワークなのですが本当にきつい。でもめちゃくちゃ楽しいです。
最初の3個くらいは余裕でアイデアを出せるのですが、4個目あたりから様子がおかしくなりました。5〜6個目で一度燃え尽き、7個目で達観し、それにより閃いて(※閃かない場合もある)8個出し切りました。

1セット終了後1人1分でアウトプットしたアイデアを話すのですが、人によって全く違うアイデアが出るので、自分では思いつかなかったアイデアを聞くことでまた違うアイデアが閃くといった好循環が生まれました。

8upsでアイデアを発散した後は、ストーリーボード(※絵コンテ)を作って、アイデアをより具体的なものに落とし込んでいきました。そのストーリーボードも多種多様なものが出来上がり、8upsで生まれた好循環がここにも作用しているなぁと感じました。

フェーズ3:決定

フェーズ3では2チームに分けて、フェーズ2で出したアイデアをワイヤーフレームに落とし込み各チーム1案ずつ出すことをゴールとしました。このワイヤーフレームを元に各チームのデザイナーがプロトタイプを作ります。(※別日に作成しました)

各チームでまず1案作りレビューを行いブラッシュアップしていくという流れで行いましたが、作成されたワイヤーフレームは各チームが重視するポイントの違いが明確に出ていて面白かったです。
また、異論の儀式というワイヤーフレームの発表と批評の時間までアイデアを否定することがなかったのがとても良かったですね。

振り返り(レトロスペクティブ)

1日目の最後にレトロスペクティブを行い、良かったこと(GOOD)、改善したいこと(DELTA)を出し合いました。どちらも同じくらい出ましたが、アウトプットのスピードが上がったからなのか、全員悩まずにサクサク出していたのが印象的でした。

GOOD

  • First Sprint!!滞りない
  • 今までにないアイデアが出た
  • 新しい視点を得た
  • 課題にフォーカスできた
  • 色々な職種の人がいると発見がある、異業種交流
  • 知らない部分のタスクを知ることができた
  • 皆さんの意見が見える化しやすかった
  • 現場視点がうまく入った?
  • 8ups良かった
  • 卓球台とても良い
  • 卓球台使いやすい
  • 時間管理がおおむねよい
  • フレームワークの意味が少しわかった
  • ファシリテーターとタイムキーパーのコンビ、安心感がすごい

DELTA

  • アイデアの発散度合いが足りなかった?
  • タスクストーリーだしのテンプレートを事前に作成しておいたほうが良さそう
  • デザインスプリントの流れをなんとなくみんな理解しておきたい
  • それぞれのフレームワークのやり方がフワっとした
  • チャレンジマップをうまく使えなかった
  • 時間が足りない
  • ユーザージャーニーマップを貼っておくホワイトボードが必要かも
  • でっかいふせんやホワイトボードを使ってもよいかも
  • チームでのフレームワーク作成時はPCが良い(早い)
  • ふせんは横から!
  • 字をきれいに
  • 絵をうまく

ふせんの剥がし方は結構重要でした…(反省)

デザインスプリント短縮版を終えてみて

初めてのデザインスプリントでしたが、それぞれのフェーズでしっかりとゴールにたどり着き、成果を出せたことは自分を含めて全参加メンバーにとっても非常に有意義でした。1人で悩まず議論をすること、アウトプットを出すことはとても大事ですね。再認識しました。ただ一日中ずっと話し、考えながら多種多様なフレームワークを実行するのは本当に疲れました。脳が疲れました。

レトロスペクティブでも出ましたが、行ったフレームワークの中では8upsが一番おもしろかったです。
一方で8upsが充実したからこそ、その前に行ったマインドマップはあまり効果が無かったかなと今振り返っても思います。課題が定義できてユーザージャーニーマップもある状態であれば、いきなり8upsを行ってもいいのかもしれません。ここらへんに関しては継続して試してどういった方法が自分たちに合っているのか検証していきたいです。

そして卓球台。デザインスプリントでとても役にたちました。
卓球台には、中央にネットと左右を分ける中央線があるのですが、このネットと線が大活躍。
ネットはチームごとの作業エリアを分ける役割をこなし、中央線はレトロスペクティブでもそうですが、分類する時に大活躍でした。何より大きいんですよね、卓球台。全員が集まって作業できる台としては最適でした。
もし、オフィスに卓球台の導入を迷われている方がいらっしゃいましたら、こんな使い方もできるんだよと参考にしていただければ嬉しいです。

そして、このデザインスプリントで出した案が本当に課題を解決できたのかは、しっかりと検証して次に活かしていきたいと思います。

以上、デザインスプリント短縮版のお話でした。