「ひと言タイム」はリモートワーク下のコミュニケーション不足を解消する

はじめまして、henzaiです。
マネーフォワードケッサイ(以下MFK)ではバックエンドエンジニアをしています。

今回はリモートワークに適応するため、私が所属している開発チームでおこなった取り組みを紹介したいと思います。 とりわけヒットした「ひと言タイム」という取り組みについてお話ししたいと思います。

リモート下でのチーム発足

私の開発チームについてすこし説明します。 私は現在おもに決済ドメインを担当するsatisfactionチーム(以下satisチーム)に所属しています。 satisチームはデザイナー兼ディレクター1名、バックエンドエンジニア2名、フロントエンドエンジニア1名の計4名で構成されています。

2020年7月に発足したチームなので、コミュニケーションは原則リモートという状態でチームビルディングをしていきました。 エンジニア3名はコロナ以前からマネーフォワードケッサイに在籍していましたが、デザイナー兼ディレクターはコロナ後のJOINだったのでリアルでお会いしたことがありませんでした。

雑談不足というリモートワークの課題

satisチームでは毎週金曜日の夕方にスプリントふりかえり(以下ふりかえり)をおこなっています。
ふりかえりの中でチームメンバーの過負荷が見えにくいという課題が挙がりました。 各人のタスク割当は可視化されていましたが、主観的な疲労度をお互いに把握しにくい状況でした。

(8月21日のふりかえり議事録より抜粋。)

(8月21日のふりかえり議事録より抜粋。)

この課題を深堀りしていくと、以下のようなことが分かってきました。

  • ミーティングはアジェンダが決まっているので仕事の話に終始している
  • ランチなどで話していたような雑談をする機会が少なくなった

オフィスワークでは自然とおこなっていた仕事”外”のコミュニケーションの機会が少なくなってしまったことでチームメンバーの状況が見えにくくなってしまっているということが分かってきました。

この課題に対してのTryとして生まれたのが「ひと言タイム」です。

(8月21日のふりかえり議事録より抜粋。最初はdailyでお気持ち確認という体裁でした。)

(8月21日のふりかえり議事録より抜粋。最初はdailyでお気持ち確認という体裁でした。)

ひと言タイム

お気持ち確認という体裁で始まった取り組みでしたが、次第にひと言タイムと呼ばれるようになり、現在に至ります。 「ひと言タイム」はスプリントプランニングとデイリースタンドアップの始めに、チームメンバーが各自なにかひと言ずつ話すというものです。話す内容について縛りなどはなくフリートークでおこなっています。 「ひと言タイム」は『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』で紹介されている『チェックイン』というアクティビティが着想のベースにあります。

「データを見る前にチェックインをします。レトロスペクティブを始める前の今の気持ちを一言でお願いします」1

『チェックイン』はふりかえりの最初におこなうアクティビティですが、ひと言タイムは毎日実施する点がオリジナルと異なります。 また、原著ではあまり長く話しすぎるのは良くないとありますが、ひと言タイムの場合、一人1分程度は話すことが多いです。

1日5分から10分程度のフリートークを毎日するため1週間では30分から1時間弱程度の分量になります。 これだけの時間を話していると、1日ではとても短い時間ですがチームメンバーが日々どんなことを考えているのか、仕事が終わった後どんなことをしているのかが少しずつ分かってきました。

ここからはふりかえりの議事録を見返しながら「ひと言タイム」がどのように定着していったかをご紹介しようと思います。

チーム外への広がりを見せるひと言タイム

(10月16日のふりかえり議事録より抜粋。)

(10月16日のふりかえり議事録より抜粋。)

チーム内でひと言タイムを2か月継続してきたあたりでデイリーやプランニングだけではなく、セールスチームとのミーティングの際にもひと言タイムを取り入れてみようということになりました。人数が多いのでさすがに全員ではありませんが、着実にひと言タイムの文化が浸透してきていることを感じるようになりました。

ふりかえりの議事録コメントにもある通り、今日はひと言ないです、というのもありのルールです。
実際にやってみると分かりますが、毎日なにか話題を用意してひと言話すのは想像するより大変です。平日は業務に追われていて特に新しい話題など得られないからです。

この時期はまだひと言タイムに慣れてなくて苦心していたようです。

ネタが切れる

(10月23日のふりかえり議事録より抜粋。)

(10月23日のふりかえり議事録より抜粋。)

この頃から コーヒー豆知識コーナー のように、なんとかシリーズとしてひと言する様式が登場し始めます。他にも はじめての積立NISAシリーズ などが生まれました。
先に述べたように、毎日ひと言用意することは中々大変です。ネタが切れることで普段の雑談なら出さないような2軍、3軍の話題を動員しないと続けられません。このことにより各自のそこそこパーソナルな話が聞けてチームの結束が強まったように感じます。

ひと言タイムの時間枠をとるようになる

(11月6日のふりかえり議事録より抜粋。)

(11月6日のふりかえり議事録より抜粋。)

チームメンバーがひと言話すことに慣れてきて、次第に話題が広がるようになってきました。もともとはデイリースタンドアップの時間内でおこなっていた取り組みでしたが、この頃からひと言タイムとデイリースタンドアップを15分の中で終えられなくなってきました。 そのため、デイリースタンドアップとは別に5分枠を用意してひと言タイムを実施することになりました。

satisチームの文化としてひと言タイムが完全に定着した瞬間でした。

まとめ

ここまで「ひと言タイム」がどのようにして生まれどのように定着していったかについてお話ししてきました。 今では「ひと言タイム」はsatisチームに欠かせない文化となりました。MFKではチームごとに運営方法が違うので、それぞれ独自の文化があって面白いです。チームメンバーにとって最適な文化を自分たちで生み出し、取り組んでいけるところがMFKのいいところだったりすると思います。

実は他にも「元気度」という文化もあるのですが、それはまた別の機会が(もし)あればご紹介したいと思います。

この記事はこんなところで。最後まで読んでくださりありがとうございました。


  1. Esther Derby and Diana Larsen著 角征典 訳『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』(2007年 オーム社 第1章)より引用。 [return]